-短編集-『泡雪』
「もしかしたら、今日はこの列車の運行は・・・」

駅員が、後ろから追いかけてきて、まだ私に話しかける。

私は、聞こえないふりをして、うつむいたまま歩く。

――どうでも、いい。
電車が来てもこなくても、どうでもいい。

来ても、乗らないかもしれない。
来なくても、彼のいる家には戻れない。


どうでもいい、今日一日がただ過ぎればいい。
どうでもいい今日一日が、ただ過ぎればいい。
どうでもいい今日一日がただ過ぎれば、いい。

同じフレーズが、句読点の位置を変えては、頭の中でこだまする。


これは、私が子どもの頃からよくする、遊び。

叱られたり、困ったり、悲しいときに、よくする・・・





< 88 / 118 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop