-短編集-『泡雪』
4
子どもの頃、かくれんぼをしたら、絶対に鬼にはなりたくなかった。
目を閉じて、次に開いたときには友達が誰もいない。
みんな、どこかで私を笑っている気がした。
実は、私をおいて、どこかに行ってしまったんではないかと、常に不安に駆られた。
そうしたがっているのではないかと、本気で不安になり、私は必死になって探した。
もちろん、みんな上手に隠れていただけで、私に見つかると驚いて逃げた。
まって
まって
まってーーーー
・・・別に、私はかわいそうな子ではなかった。
だけど、鬼ごっこの「鬼」をしたときだけ、なんだかものすごい疎外感を感じ、誰もが私を嫌っているような錯覚をした。
そして、不思議と帰り道には、友達とけんかになった。
「私のこと、悪口言ってたでしょう?」
「はぁ?言ってないよ?なんで?」
その気持ちに、子どもの頃は名前をつけられなかったけど、大人になった今なら分かる。
あれは、『被害妄想』というやつだったんだ。
家に帰ってから、私はかくれんぼで汚してしまったジャージの膝をみて、いつも後悔した。
――遊ばなければよかった。
そこから。