-短編集-『泡雪』
聞いてんの?は、私の口癖だと

友達や親、最近は彼によく言われた。

言われたほうは、あんまりいい気分にならないから、
やめたほうがいいと言われていたけど、きちんと聞いている顔をせずにいるほうが悪いと思っていたから、気にしていなかった。


今、私はワタシに言われてます。


「・・・ちょっと、いいですか」

とりあえず、自分だとは思いながらも、他人かも知れない気持ちはぬぐいきれず、敬語を使ってみた。

「はい、どうぞ」

「あなた、名前は?」

「あんたとおなじでしょ、小川 ゆかり」

やっぱりそぅか。まぁ。そうだろう。顔も、服も同じだし。

「今日だけ、だよ」

ワタシは言った。

「あんた、今日だけのラッキーチャンス」

胡散臭い英語も、私みたいだった。






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