-短編集-『泡雪』
「ついてきて。あんたの乗りたかった電車、乗せてあげるから」

「いや、いいです」

「乗りたかったんでしょ?乗せてあげるってば」

「いやいや、ちょっと・・・」

私が再三断っているのも関わらず、ワタシは強引だった。

ワタシが私の願いを叶える・・・
そのおかしな状況に、首をかしげた。

「いくよ」

そういったらワタシは、すでに私の手荷物をすべて抱えて、立ち上がっていた。


「や、やめてよ!」

「何が」

声を荒げても、誰も私たちに気づかなかった。

鞄の奪い合いをしながら、もつれ合うようにして店内を出る。






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