維新なんてクソ食らえ後始末が大変でしょ。浅木の巻
塔の最上階では小春が部屋の隅の柱に縛られていた。

氷雨は欄干の上から火の手の上がった街を見つめていた。

「燃えろ。なあ小春、いい眺めだろう」

「氷雨兄さん何でこんなことをするの」

「おまえは今の生活で満足しているのか。いいか、再び戦乱の世がくれば俺たちがまた活躍できる」

「そ、そんなことのために街を壊すというの」

「そんなこととは。おまえ維新の真実を知らずに偉そうなことを言うな。維新後、俺たちの行き場は無くなった。おまえらのように、警視局に取り入って政府の犬になれたのは運のいい一部の奴らだ。多くの同士は先祖からの技術を生かせる場もなく、何もかも今の世では無用の長物だ。忍者なんて過去の遺物にされたんだ」

「そんなことない。みんな精一杯生きているもの」

「何を言う。今頃、お庭番の頭として腕をふるえていたものを」

「そんなにお庭番にこだわっているの」


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