チョコレート・キス
まとわりついてくる利真を一睨みすれば、利真はへらりと笑ってさらに擦り寄ってくる。
ああやだ。なんでこんな勝手な霊にほだされちゃったんだろなんて、ちょっと後悔しかけていたら、「でもねぇ、氷沙」なんて真面目な声を利真は出す。
「いつなにがあるかなんて、わかんないんだよ。素直になったほうがいいと思うよ、たとえ脈がないんだとしても」
「………そうだね、ごめん」
そうだね、どんなに明るく振舞っていても、利真は死んでいて、だからもう、彼女は二度と大切な人に触れることも、しゃべりかけることも叶わないんだ。
素直に謝れば、利真は照れくさそうに目を伏せて、それからひどくやさしく笑った。