チョコレート・キス

「だからあたしラッキーだって思うんだ。氷沙に出会えて。
氷沙のおかげで、辰馬にもう一度会えるんだから」


花がほころぶように笑うと言う表現が、これほど似合う笑顔をはじめて見たと、あたしはそのとき思った。

でも彼女はもうこの世にはいないんだけど。透ける表情を見つめる。


あたしには出来ない。

好きな人をこんな純粋に好きだと思うことは。あんな幸せそうに笑うことは。
できないと、ただそう思った。






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