チョコレート・キス
「……別にほんまに俺は波樹がなにしてもええと思ってんで。その責任が一人で取りきれるんやったらね」
「嫌味かそれは」
「責任が取りきられへんって分かってることは褒めたるわ」
ざけんなと小さく波樹は吐き捨てる。
「楓が心配してんのは、氷沙だけじゃねぇかよ」
「波樹のことも、心配しとるよ?」
それも本当。
そうじゃなかったらこんな天気のいい放課後を、波樹のご機嫌伺いに使うわけがない。
波樹は面倒くさそうにため息をついて、小難しそうな皺を眉間に集めている。冗談じゃなく幸せが逃げ出していきそうな形相だ。