チョコレート・キス
「あ、楓さん、波樹」
「なんや、寺田、久しぶりやなぁ」
くりんとた大きな瞳を瞬かせて自分を見上げてきた少年に、自然と浮かべなれた笑顔を返す。
久しぶりの再開を嬉しそうに弾んだ声をあげる寺田は犬みたいで可愛い。
波樹や氷沙の同級で、氷沙が心配する波樹の交友相手だ。
可愛らしい顔立ちを気にしてか、いつも目つきを悪くして突っ張っている寺田はなんとなく、波樹に似ていて、俺は気に入っていた。
「どうかしたのかよ」
不機嫌そうな波樹の声に、寺田もそっちにはぶっきらぼうな返事を返す。
その返答に波樹はさらに不機嫌そうな声をあげて、その内容にこのまま立ち去ろうと思っていた俺も思わず振り返る。