チョコレート・キス

ぴきと音を立てて南の笑顔があからさまに固まる。せっかくの美人も台無しだ。

京都弁は笑顔さえ保っていればやわらかく聞こえるから便利だと思う。波樹にはよくエセくさいといわれるけれども。


「……楓、あんな子どもがいいの?」

「子どもやなくて氷沙やねんもん、俺には」


ふてくされた表情で南は口を尖らせて、そのくせ媚と甘えがつまった瞳で見上げてくる。

きれいな顔。女らしい曲線。
そんなものより、素直じゃない氷沙の憎まれ口の方が愛おしく思えるのだから、大概自分もしょうがないなぁと思う。その上、それがこそばゆく感じるなんて。


そろそろいい時間かな、氷沙のところに行くかと決めて、南に別れを告げようとしていたまさにそのとき。

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