チョコレート・キス
頷けば、利真は笑みを深めた。
でも、これで最後にするんだと、彼女は続ける。
そう言わなければ、決意が歪んでしまうとでも思っているのか、利真は何度も言葉は違えど同じ意味合いのそれを吐き出し続けていた。
これで最後。あたしはちゃんと天国に行くんだ。と。
もう、辰馬には会わないから。
これが最後だから。
たぶん、辰馬とは喋れないと思うけど、氷沙の隣に立って、その横であたしの思いを氷沙が伝えてくれるのをちゃんと聞いてるから。それで、終わりにするから。
「……じゃ、行こうか」
「うん! お願い」
利真の声に後押しされて、あたしは外付けの階段を昇って3階を目指す。306。
そこに佐倉辰馬は住んでいるらしい。