チョコレート・キス
「――――誰?」
幸か不幸か、扉はかちゃんと開いて、背の高い男の人が出てきた。
明るい金茶の髪に、唇にピアス。顔立ちは整っていると言えば整ってるけど……。噂どおりだ。
あたしは小さく唾を飲み込んで、目の前の人を見上げて口を開いた。
見も知らないあたしが現れたから当たり前なんだろうけど、佐倉辰馬は訝しげな表情だ。
「あ……あの、あたし、利真の――あなたの恋人の友達で、利真から伝言をあなたに頼まれてて、伝えにきたの」
「…………利真?」
「そう、利真。あなたの恋人だった人でしょ? 一年前の今日、死んでしまった。あの子があなたのことをどう思っていたかあたしは知ってるから、それを伝えに……」
「ああ、あの女か。おれの家から飛び出して間抜けに車にはねられたあれね」