チョコレート・キス
さもどうでも良さそうに、辰馬は夕方にもかかわらず寝起きのような状態の頭をかく。
その言い草に、何よそれと激昂するより早く、隣に浮いていたはずの利真の気配が霞んだのを知る。
利真を伺うことが怖くて、ごまかしを含みながらあたしは辰馬を睨んだ。
「……なんですか、それ。あなたの大切だった人じゃないの?」
「どうでもいいって。ちょっと好みだったから付き合ってたけどさぁ、まさか浮気の1つや2つであんなに騒ぐ重い女だったって知ってたら、手ぇ出さなかったのにな」
ただでさえあいつが死んだとき、警察とかにもいろいろ聞かれてマジ面倒だったんだよ。最悪だった。
そう続けて、辰馬はふっとあたしを見た。