チョコレート・キス

「きゃあ、楓先輩だぁ!高校行っちゃってから全然姿見れなかったんだもん!超久しぶり!ねぇねぇ、氷沙っ、声かけようよ!」

「あ、でも。楓先輩、女の人と一緒だよ!えー、誰なの、あの女!」

「え?マジで!?氷沙知ってる?あぁー、でもきれいな人だね、高校生って感じだ」

「―――――知らない!彼女かなんかなんじゃないの。あたしは知らないけどっ」

いらっとした気分そのままにきつい口調が飛び出すと、白い息が湧き上がって、なんとなくいじけてみたくなる。

あたしたちの視線の先で、自分も今春には着るのだろう制服を着たきれいな髪の女の人と、ひとつ年上の幼馴染兼同居人である楓が楽しそうに道を歩いている。

でも来年、あんなふうに大人っぽく、きれいになっている自信なんて、ない。

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