チョコレート・キス

でも、それにどうしたって感情は追いつきそうにはなかった。
だって、一緒にいたかったの。

なんでそれが駄目なの? ねぇ、波樹。楓――……。


「―――――来るな! この化け物!」


扉越しに聞こえた、辰馬の言葉は絶対に言ってはいけないものだ。さぁっと血の気が引いていくのが自分でも分かる。


『なんで? なんでっ、なんでなのよぉ―――っ!』



ぎゃあっとすさまじい悲鳴が、上がった。

――やって、しまった……。

あたしの腕を掴む波樹の指先に痛いほど力が込められていくのを感じた。

どうにも、できない。どうにもならない。
やるせない苛立ちが涙になって1滴、あたしの膝をぬらした。

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