チョコレート・キス

「……おせぇよ。っつーか来ないんじゃなかったのかよ」

「ヒーローは遅れてくるもんやって知らんの? 波樹」

「―――遅れて着すぎだろうがよっ」


悔しそうに波樹が吐き捨てた。
それでもその腕は姉を守るように氷沙の背中に回されたままで。

なんや遅れてきた意味は一応あったみたいやなと安堵する。


「―――遅ぅなってごめんな、氷沙」

「………楓っ」


氷沙が安心するいつもの表情で微笑めば、完全に泣き出した氷沙が波樹の腕を抜け出して飛びついてくる。
それを支えてやりながらあやすように背中を叩く。

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