チョコレート・キス
「大丈夫、よぅがんばってんなぁ。後は、俺がちゃんと連れてったるから。氷沙は安心し。見てたらええよ」
「楓っ、利真が、利真がね」
「大丈夫、わかっとるから」
きゅっと一度、艶やかな黒髪を抱きしめて氷沙と波樹の前に立った。
対峙するドアの先で感じるのはひどく強い悲しみと、憎しみで。
(開放したらな、な)
チョーカーを握り締めて、力を込めた。
天野の剣。
斬ってしまえばたぶん一瞬だ。けれど彼女自身も消失してしまう。この世から完璧に。
けれど彼女自身の力で昇華してくれたのなら、彼女の魂は安らかに天上へ昇る。
それが本当にあるのかどうかは、こんなことをしていながら確証を持ってはいないけれども。