チョコレート・キス
「――姉ちゃん、ちゃんとみたっとりや」
「………分かってるっつの」
可愛くない返事とは裏腹に氷沙をしっかりと抱きとめているその姿に安堵して、ドアを力任せに蹴破った。
案外すんなりとあいたそれから中へ踏み込めば、居たのは気と同様、ひどく暗い目をした同じ年頃の少女だった。
彼女の足元に転がる男を見て、まだ息はありそうだと判断してひとまずほっとする。
ここで何かあれば、氷沙が悲しむ。
にこっと少女へ意識的に笑みを向ける。
「――こんにちは」
「……あなたが氷沙の好きな人?」
「どやろ? よう分からへん」
「そっか。でもうん。あなたなんだね。いいなぁ、氷沙。いいな、好きな人に来てもらえて、守ってもらえて。いいな、氷沙は、いいな」