チョコレート・キス
今の彼女なら、安らかに逝くことができるだろう。
だからこそ、このタイミングを逃すわけにはいかない。
少女の身体が輝き出して、ふわっと彼女の足元が浮き上がった。昇れる。
見送る自分に、少女は笑いかけた。
「ありがとうって、氷沙に伝えて。それからかっこ悪いところみせてごめんねって」
「かっこわるうなんてなかったで。氷沙にはちゃんと伝えとくし、安心してな」
「……うん」
彼女の瞳は倒れ付している男に注がれる。心配そうに眉根をひそめ、けれど断ち切るように微笑んだ。
「…………ありがと」