チョコレート・キス

「俺はなんもしとらへんよ。感謝は氷沙だけでええねんで」

「ううん。あなたがいるから、あたしこんなに穏やかでいられるんだと思う」


清らかな顔だった。

きっと大丈夫だと思う。彼女は迷わない。
同じときを過ごすことはないけれど、それでも。


昇る直前、いたずら気に笑った彼女は、ひっそりと耳打ちを残していった。


しばらくしてからその意味に、じんわりと照れくささが広がって、誤魔化すように髪の毛をかき混ぜる。




< 71 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop