チョコレート・キス
「俺はなんもしとらへんよ。感謝は氷沙だけでええねんで」
「ううん。あなたがいるから、あたしこんなに穏やかでいられるんだと思う」
清らかな顔だった。
きっと大丈夫だと思う。彼女は迷わない。
同じときを過ごすことはないけれど、それでも。
昇る直前、いたずら気に笑った彼女は、ひっそりと耳打ちを残していった。
しばらくしてからその意味に、じんわりと照れくささが広がって、誤魔化すように髪の毛をかき混ぜる。