チョコレート・キス
「どしたん? あ、ヴァレンタイン? せやったら俺、今年は手作りがええなぁ」
「……そんなんじゃないもん」
ふてくされたような声が出て、自分でも恥ずかしいと思ったけれど、そんな思いはふんと馬鹿にするように小さく笑った、楓の横にいる女の人の表情であっけなく消えていって、かわりに、いらいらがヒートアップする。
「楓も大変だね、その子なんでしょ?同居人って。いつまでも中学生のお守りじゃあ」
「こら、何言うてんねん。それに氷沙ももう高校生になるもんな?」
……なに、そのフォローにちっともなってないフォローは!
こんな性格悪そうな女が好きだなんて、楓も大概趣味悪っ。なにか言い返すのも嫌で、あたしはくるっと楓たちから背を向けて歩き出した。