双子悪魔のホームステイ



「せ、征服などという大層なことを命じているわけじゃないぞ。わしはただ……下界のエネルギーを天界に持ち帰ってきてはくれないかと……。」


青年の前に居た初老の男性が、控えめにかつ機嫌を窺っているような下から目線で返す。


銀色の髪に鬼のように尖った角が二本、くるんと半月形にカールした二束の髭、右手には三叉槍。

瞳は青く、首からは黒い帳簿がかけられている。


彼は、一般に“閻魔”と恐れられる者の格好だ。



「それが征服以外の何だって言うんだよ?人間共と友好条約でも締結しろってか?」


「クレイー。気が乗らないのはわかるけど、やるしかないじゃんか。このまま、天界が完全に崩壊したら、居場所無くなっちゃうしさ!」


父親である閻魔相手に凄む銀髪の青年を、隣に居た青年が押し止める。


年は、銀髪青年と同じくらいだろうか。

こちらは、赤い瞳で、卵形の幼い顔立ちだった。

出で立ちは、銀髪の青年と同じ“悪魔”のそれで、右手にドクロの腕輪をつけている。
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