双子悪魔のホームステイ
「待たぬ!小腹が空いたら、また顔を見せてやらんこともないから、それまでお主が待っておれ!」
手を伸ばして制止しようとする結祢を振り切り、エイビルの姿は瞬間移動したかのようにフッと消えた。
(い、行ってしまいましたか……。んっ?何か落ちてきましたね……。)
エイビルが居た場所からポトンと地面に落とされた物を、結祢はひょいと拾い上げる。
それは、木札で“恋良厄”と彫られていた。
(私にくれるという意味なのですかね?“恋良厄”って……)
「あっ……そう言えば、クレイ君とディザス君!早く帰らないと!!」
結祢は確認するように言うと、木札を握りしめて、夕焼けに染まった住宅街を駆け出した。
自転車で帰る男子学生や、買い物袋をぶら下げてゆっくりと歩く主婦、飼い犬を散歩させる小学生などの視線を物ともせず、結祢はただ全速力で走る。
(どうか……ディザス君とクレイ君に何も災いなど無いですように。)
心の底からそう願いながら……。