僕等のレイニーデイズ


ぽっちゃりしているわけじゃ、ないんだ。全然。

ふっくらした頬と、すっとした高めの鼻と、長い睫毛。


横顔が、綺麗。



「………傘、なくて」


あたしから視線を外してその眼は空を仰ぐと、雨の滲んだ固いコンクリートに留まった。

ふっ、と息を漏らすようにして笑った男の子は


「ださいよね」


と言って、長い睫毛はふせたまま、口元だけ柔らかい弧を描いた。

全く荒れてない、薄桃色。




「あ、の」


鈍感なのか、当人は気づくそぶりもないのだけれど、まじまじと見れば見るほどこの人が綺麗に見えて。

始めて言葉を放ったあの時より幾分か緊張してあたしは告う。


「これ、どうぞ」



置き傘じゃ、小さいだろうし、柄も少し女の子っぽいし…と

勝手に考慮して、手に持っていた方の、鞄とかが濡れないように少し大きめのを選んで買ったビニール傘を差し出した。


(なんか告白みたいな…)


ひとり、そんな気持ちになってドギマギする。
断られたら虚しすぎる。



「え…いや、いいよ」



……グサッ


心境が顔にでてしまったのか、男の子はハッとして理由をつけ加えた。





「だって、俺がコレ借りたら」



君の傘が、

なくなっちゃうじゃん。


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