僕等のレイニーデイズ



そうして尚、ビニール傘を差し出しているあたしに、戸惑ったように男の子は言った。



「じゃあ…、でも…本当に?
彼氏とかいたら、その……」



上手く言えない、という感じで男の子は口ごもった。

あたしに彼氏がいると思って、そうなら彼氏に誤解されるかもみたいな心配かけてるのかな?


「大丈夫ですよ。

それにもしもこれがきっかけであなたが明日とかに風邪ひいちゃったりしたらあたし、

絶対後悔すると思うから」



最後はハッキリ言い切って、傘を「だから、はい」と言って手渡した。



「……ありがとう」



はにかんだように笑った笑顔にきゅんとするあたし。

……どうしよう。すきだ。




「ぶっちゃけ俺、実はかなり どうしようかって困っててさ。
ほんとに、ありがとう」




ペコッと頭を下げてそのまま傘を広げて帰ろうとする男の子から目を離せないあたしは、傘を広げるその動作まで目で追い続けていた。



きっとこのまま、この人は行ってしまうんだろうと思う。


なんと高校生活3年目にして、今日初めて会ったんだ。

もしかしたらもう、卒業まで、二度と会えないかもしれない。


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