僕等のレイニーデイズ
「あっ」
男の子がハッとして、見ていたあたしもつられてハッとした。
「やっべ、あぶねー」
焦ったように言って、男の子は急ぎ足で下駄箱に戻った。
何かと思ってもそのまま、まるで何かの余韻に浸るように、首以外が動かないあたしに、戻ってきた男の子は
「上履きのまま帰るとこだった」
と笑いかけた。
その足には、つっかけるようにして、踵を踏まれた跡のついたローファーがしっかり在った。
(以外とぬけてる……)
あんなに『指先がなんたら~』みたいに些細なとこまで見ていたハズなのに、それに気がつかなかったあたしもあたしだということには気がつかない。
それだけ彼の一挙一動にすっかり夢中だということだ。
「あっ、ねぇ」
思い出したように再び広げた傘を片手に、彼はあたしに振り返った。
あたしは突然合った眼に、ギクッという表現がピッタリなリアクションをしてしまう。
「君、名前は?」
(名前? あぁ、名前ね)
「…岡本………、」
「……岡本さん? わかった。
またね、ありがとう、岡本さん」