僕等のレイニーデイズ
「へぇ~、サガラくんってんだ~、ふぅ~ん……」
いかにも「もう知ってるけど」面していうもんだから、あたしは胸倉から両手を放してバカを叩く体制に入った。
(…………うわ)
ら、萎えた。
あたしが自分でさっき胸倉を思いきり掴んでめちゃくちゃに揺すったせいで、本人が気づいているかは抜きに、真田のワイシャツはだらし無くカーディガンからはみ出るくらい乱れて、そのぐしゃぐしゃに開いた胸元から奴の谷間を見てしまった。
(で、でか…!)
「自分と比べたら」、だけど。薄々知っていたことだけれど、泣きそうになる。
「ねーぇ、昨日うちがいない間に何があったーん?『借りる』で済んだーん?『奪われた』んじゃなーい?
ナニを、とは言わないけどネ」
大人の階段のーぼるー、君はまだー、シンデレラっさー♪
と、尾崎豊の名曲を口ずさみだしたその口を塞いで、だから言いたくなかったんだ、と重いため息をついた。
……多分、真田にこのことを話した人物は一人しかいないので後でしばくと心に誓った。