僕等のレイニーデイズ
「先生なら今いないよ」
「うそ…どうしよう」
「怪我?」
「あ、はい、この子が……」
「うわ…、結構酷いね」
やっぱりカーテン越しに丸聞こえな会話。
……相良くんは、その怪我した誰かに触れるの?
手当てするために、って思っても、嫌だと思ってしまう。
声からして相手は女の子で、会話の仕方からして後輩の子。
(……やだ…)
バサ、
布団を頭からすっぽり被る。
その中でしっかり耳を塞いだ。何故か、それと同時に力が入ってしまった瞼も、ギュ と閉じた。
これで、もう何も聞こえない。
天使みたいに透き通って高い、後輩の女の子の声も
相良くんの低すぎず高くもない鼻にかかった澄んだ声と
ゆったりした話し方も
全部。
――意識さえ、しなければ。
シャ
「? 寝ちゃった?」
本当は相良くんが、カーテンを開ける前に何度かあたしに声をかけてくれてたのを知ってる。
それでいて、無視した。
扉が閉開する音は、嫌でもかすかに鼓膜に届いてしまって。
あたしは、掌に込めてた力を少しだけぬいたのだ。
だから。
(汚いな…自分、)