スカイハイ



「……玉浦さん、ですか」
「はい、実は玉浦って非常に気難しい方でして。いつもご機嫌を損ねてしまうのです。特に今日は機嫌が良くないみたいで……
今朝、玉浦さんと一緒に歩いていたので、知り合いなのかと思い……」

一気に頭の回転が遅くなる。
“玉浦さん”ってヒロくんの事だよね。この世界には、私の知らないヒロくんがいると言う事が信じられない。

それ以上に、今目の前にいる人は私の事を知らない。
“この仕事は、私の地位で作り上げた仕事じゃない”って事に嫌でも気がついてしまった。

「だから、玉浦さんを……」
「違うんです」
気がついたら、私はこの仕事を断ってしまっていた。
「玉浦さんとは朝偶然会っただけで、本当にそんなよく知らないんです。
だからこのお仕事は受け取れません」



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