スカイハイ
「こ、今度さ、ドラマでキスシーンがあるんだ。だからその練習だよ」
“その練習”って何とも思ってない人とキスする練習って意味かな。
「それに芸能人は嫌でもキスしなくちゃいけない時があるんだから、な?」
“嫌でもキスしなくちゃいけない”って、私とキスなんてしたくなかったならしなければよかったのに。
「私は芸能人じゃないよ……」
私はヒロくんに恋してるだけなのに。
私はヒロくんを押してできた小さな隙間から擦り抜けて、走って帰る。
「ちょっと待てよ、だから…」
「大丈夫です玉浦さん、仕事ですから」
もう何も聞きたくなかった。
仕事って言われたら、私の気持ちは関係ない。もう割り切るしかないじゃないか。