スカイハイ



ワタナベさんが買い物に出ると、私は軽くシャワーを浴びて出た。タクシーの中で変な汗、かいちゃったし。
ヒロくんへの想いは撮影にはいらない。だってただ私を追い詰めるだけだから。

そろそろワタナベさんが帰って来る頃かと思ったら、ドアが開いた音がした。
私はバスタオルを体に巻き付けて、髪を一つに縛ってシャワールームを出た。
「ワタナベさん、ありがとうござ……」
「外でこれ渡されたんだけど……っ?!」

ワタナベさんがいるかと思ったのに、そこにいたのはヒロくんだった。ヒロくんの手からペットボトルとか入ったビニール袋が落ちた。
「ヒロくん、これ落ちたよ」
「あ、あぁ…うん。それよりさ…」
ヒロくんが落としたビニール袋を拾って、ヒロくんに渡したのに、ヒロくんはそれを受け取ろうとしない。それどころか、私と目を合わそうともしない。



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