いちばんの星 -side episode-
どうして?…そう思わず口からこぼれそうになった言葉を、ミュリエルはぐっとこらえた。
「一方的に伝えて迷惑だったかもしれないけど…私はよかったって思ってる」
少しだけ瞳を潤ませながら、柔らかくラナは微笑んだ。
「…そう」
それだけ呟くと、ミュリエルは笑顔でラナの手を握りしめた。
「がんばったわね…」
「ありがとう」
そんなふたりの会話を、扉一枚を挟んだ寝室で、ヴェルヌはじっと聞いていた。
決して聞くつもりでは無かったが、さすがに目が覚めてしまったのだ。
ベッドの背もたれに体を預けながら頭の後ろで手を組むと、視線を天井に向けた。
「スティーク…」
そう呟いたヴェルヌの言葉は、誰もいない寝室の中に消えていった。