いちばんの星 -side episode-
「そんな事ないよ」
ただひとり、たったひとりの大切な人さえ幸せにできない…
「幸せにしてやれよ」
そう言ってグリンの肩をポンと叩くと、グリンは照れるように微笑んだ。
「付き合ってくれてありがとう」
そう言って立ち上がると、テントの方へと歩きだした。
城を出る前にヴェルヌに言われた言葉が、ずっと頭にこだましていた。
『ラナが結婚するらしいぞ』
「離れてみてわかる、か」
スティークは再び満天の星空に目を向けた。
『後悔するぞ』
以前は自分がヴェルヌに言った言葉だった。
「俺の場合は…失ってから気付く、だな」
そう呟いたスティークの言葉は、満天の星空に静かに消えていった。