いちばんの星 -side episode-
「ヴェルヌ様…」
ヴェルヌの瞳をじっと見つめると、ミュリエルはその美しい唇を開いた。
「ラナが、城を辞めるそうなんです」
「……そうか」
ヴェルヌのそっけない返事に、ミュリエルは少し顔を歪めた。
「きっと、結婚をするからです。ヴェルヌ様は何とも思わないのですか?」
いつもより声を荒げるミュリエルに対して、ヴェルヌは冷静だった。
「ラナが選んだ道だ。俺にもお前にも、どうこう言う権利はない」
もっともな意見に、ミュリエルは口籠もってしまう。
確かにそうなのだが、やはりミュリエルはこのままふたりが別れてしまうという現実を受け入れたくなかったのだ。