いちばんの星 -side episode-
もうラナは引き返せなかった。
今引き返せば、傷つく人があまりにも多すぎる…
「結婚、するんです…」
何度も何度も、スティークの腕の中で呟いた。
「知ってるよ」
そう言うと、腕の中のラナを抱く腕に力をこめた。
一度俺は君から逃げた。
「君が結婚するって事は知ってる」
自分の気持ちに自信が持てなくて、俺は君から逃げていたんだ。
けれど、そんな俺に力をくれたのは…大切な友の言葉だった。
そして――…
…――コンコン
突然部屋に響くノックの音。
それは昨晩の事だった。
「誰だ?」
こんな遅くに誰だろうと思っていると、それはあまりにも意外な人物だった。
「私です」
「…ミュリエル?」