にじいろ奇跡
1年後―――――



「おはよう。ママ。パパ。牧野さん」

「おはようございます。お嬢様」

「おはよう。沙夜ちゃん」

「おはよう。沙夜」


私は何時も通りの幸せな時間を送っている。でも・・・少しだけ、ほんの少しだけ変わった。


「体調はどう?」

「大丈夫だよ」


私の体の調子が悪くなった。元々危険な状態で産まれた私。


九条先生から真実の全てを聞かされた時に、言われた事だった。


『沙夜さんは非常に危険な状態で産まれてきました。今まで何も起こらず健康に過ごせた事は奇跡なんです』


と。これから先私の身に何が起こるか分からないと言われて、数日後私は突然倒れた。


検査と治療を担当して下さった九条先生は大変驚かれていた。


『今まで何も起こらなかった事が不思議な位だ』


と。私の肺は同年代の子よりも小さく、本来の3分の1位しか機能していない状態だったのだ。


私は運動制限もされて、毎日の薬を飲むことになった。心配性な両親と牧野さんが必要以上に気を遣ってくれる。


両親に至っては、私を苦しませないようにと必死だ。ルリの二の舞にはなって欲しくないという両親の気持ちは痛いほど分かる。


「今日も私は元気だよ。だから大丈夫」


心配しないで。なんて私は言えない。それが両親と牧野さんの愛情だから。


「そう。今日も無理は禁物だからね」

「精一杯頑張ってきなさい」

「うん」


私は身支度を整えて、今日も学校に行く。辛い日や雨の日はパパが送ってくれるけれども、基本は徒歩で行く。


「お嬢様。郁人さんがお迎えに来てくれてますよ」

「本当!?じゃぁ行ってきます!!」

「いってらっしゃい」

「いってらっしゃい」

「いってらっしゃいませ」
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