にじいろ奇跡
家に戻ると、先程までの楽しい気持ちが一気に消え失せた。


「ただいま・・・」


しんとした誰も居ない家に、声をかけるのは何時もの癖。当然だが、誰も返してくれない。


だって・・・私には家族が居ないから。


ずっと一人だったから。施設を出て最初のうちは家事と学校、アルバイトの両立も凄くしんどかったけれど


今は慣れたものだ。面会時間ギリギリまでルリと話していることが出来るようになった。


私は部屋着に着替えると、すぐに家事に勤しむ。


これで家族が居たら、ご飯は豪華にするけれど、一人だから必要最低限の栄養が摂れる、簡単な料理だ。


学校の騒がしい中で食べるご飯が如何に幸せか、感じる一時・・・。


「ふう・・・」


お風呂からあがって、テレビをつける。


ニュースは何時も悲しい話しか取り上げない。明るい話は無いのか。


「本当世の中物騒だ」


子供を虐待する親や、棄てる親の気持ちなど、理解出来ないししたくもない。


私はテレビを消して、仕事でもしようかと考えながら、ビーズを広げて作業に没頭した。


趣味程度にやっているから、こうした時間を持て余しているときにやる。


本当は学校でもやりたいところだけれども、学校でなんかビーズをひっくり返されそうで恐ろしい。


複雑な作業だけれども、1個1個のビーズを編んで一つの形になっていくのは、本当に楽しい。
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