にじいろ奇跡
今日は車が多い。
雨だから、送って貰ってるんだろう。


1年生だろうか。私の前で車から笑顔で降り、車が見えなくなるまで、その場で立っていた。


こういう姿を見ると、本当に羨ましい。私にも親がいたら…と考えてしまう。


「良いなぁ・・・」

「何がだよ?」

「キャッ?!」


ポツリと出てきた言葉。


誰にも聞かれて無いかと思っていたが、聞いていたらしい・・・。


急に声をかけられて、驚いた。


「あ、悪りぃな沙夜。んなに驚かなくても・・・」

「ご、御免・・・郁人」



声をかけてくれたのは、坂井郁人。


私のクラスメートであり、想い人であり、ルリの彼氏だ。


地毛だと言う赤茶の髪がとても目立つ。陸上部所属の人気者。何度も大会で優勝している。


「瑠璃の超そっくりさん。親が居たらとか考えてたのかよ?くだらねぇ」


・・・貴方のそういうとこが、余計に私を狂わせる。


さり気ない優しさ・・・そんなトコにルリも惹かれたのだろう。


この二人は本当に仲が良い。お互いがお互いに好きなんだと分かるくらい。



この人がルリでなく私を見てくれたら・・・。



・・・嫌な考えだ。彼は私でなくルリを選んだのに・・・。


「まぁ、ね。私先行くね」


校門まであと少しの距離。


嫌な感情が過った。私は何を考えてたんだろう・・・。


郁人にこんな感情があると、知られそうで、嫌になった私は郁人を置いて校門まで走った。
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