にじいろ奇跡
『俺だけど――――』



ブチッ



郁人からだった。ボタンを押して切る。心臓がバクバクしてる


ズキズキと心が痛む。


「ッ・・・駄目・・・だよ・・・」


ルリと郁人が一緒に居るだけで、心が痛い。張り裂けそうだ。


(こんなに私・・・郁人が好きなんだ・・・)


自覚すると、もう止まらない。


今までの様に郁人と接する事が出来るだろうか・・・


ルリと顔を合わせられるだろうか・・・


(・・・私には無理だ。出来ない)


目頭が熱い。涙が出てくる。


辛い・・・
苦しい・・・
胸が張り裂けそう・・・


私の好きな人は、既に私の親友の恋人だった。


諦めようと封印した筈のこの想いは、どんどん溢れてくる。


「・・・ッ郁人の事なんか・・・好きになるんじゃ無かった・・・なんで好きになっちゃったの・・・」

(恋がこんなに苦しいものだったなんて・・・)


恋愛小説の様に、恋は上手くいかないんだ・・・。


恋愛小説はただの小説だもん。


次々に流れるこの涙を止める方法を私は知らない。


この夜私は一晩中泣いた。涙が枯れるまで泣いた。


熱々だったはずのホットココアは既に冷えきってしまった。
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