にじいろ奇跡
「で?わざわざ家に来て何の用なの?」


マグカップ二つをリビングに持って行き、中條の前に片方を差し出す。


「サンキュー。やっぱ黒月の美味いな」

「・・・どうも」


中條は一口コーヒーを啜ると、ニカッと清々しい笑顔を浮かべた。


沈黙が訪れるが、けして居心地が悪いものではない。暖かな午後の日差しが心地よい。


「昨日郁人心配してたぞ」

「!?」


ドキリと心臓がなる。


「黒月、昨日何があった?」

「・・・中條には関係ないでしょ」


中條には関係ない。それに郁人と一番仲が良い中條には、言えない。言える訳がない。


「・・・」

「ッ!!」


中條の雰囲気が、ガラリと変わった。何も言わず私を睨むように見つめる中條に


私は思わず息をのんだ。中條に怖れを抱く。


「関係ない、ね・・・」

「な、何?」


何時もと違う雰囲気の中條に、驚いて若干声が裏返った。
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