にじいろ奇跡
「暑すぎる・・・」


まだ朝だというのに、この暑さは・・・。


昼頃になったらもっと暑いだろうと考えると、気分が滅入ってくる。


でも流石にもうテストも近い。授業を出なければ、全く手が付かないだろう。


「はぁ・・・」

(夏なんか嫌いだ)


私は重いため息をつきながら、ふらふらとする体に鞭打って学校までの道のりを歩いていく。


何時もなら何とも思わない道も、気分次第では遠く感じるのだ。


実際、今の私は1分が長く感じられるほどだ。


「よ。大丈夫か沙夜?」


後ろから背中を叩かれ、声をかけられた。振り向かずとも誰だか判別出来る。


なんせこの声の持ち主は私が密かに想いを寄せている相手だ。


「い・・・くと」


この時ばかりは、この暑い夏にも感謝。真っ赤であろう私の顔は『暑いから』で誤魔化せれる。


朝から郁人に会えるなんて、今日はついてるかもしれない。と、内心喜んでいる自分に呆れた。


「すげぇフラフラだな。沙夜は夏嫌いか?」

「夏は・・・嫌いじゃない。暑いのは苦手」

「低血圧の沙夜にとって夏は苦痛なんだな。カバン持つよ。お前今にも倒れそうだし」

「ちょッ!?」


私のカバンを持ち、私の隣を歩く郁人。恋人のようなポジションにちょっと嬉しい。


(顔・・・にやけてないと良いけど・・・)





分かってる・・・




現実は郁人はルリのもの。私は隣にいて良い存在じゃない事くらい理解している。
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