にじいろ奇跡
外の表札に書かれている名前を見て、肩の力を抜いた。


溜め息をつく。知らない間に緊張していたらしい。


何を緊張しているのだろうか・・・私は思わず笑った。


いや。笑おうとして、顔が引きつり苦笑いになってしまった。


此処へ来る途中に見かけた、ルリの好きそうなケーキ。


今月はピンチでコレを買うのは、相当の痛手だった。


だけど、ルリの笑顔が見れるならと思い、奮発して買った。


ルリの笑顔には、それだけの価値がある。


ケーキの箱を見て、笑顔になるルリを想像した。小さな笑みを作る。


大丈夫。今度はちゃんと笑えた。


私は静かにルリの部屋の扉を開けた。


暖かい日差しが振り込む室内。広々とした部屋に、日当たりの良い箇所に一つのベット。


個室のそこは何時来てもちょっと寂しい感じがする。


唯一のベットの上で、私と全く同じ腰まである日本人離れした、ハニーブラウンの髪をもつ、


私の超そっくりさんの親友、ルリが居た。違うのは、肌の白さだろうか。


ルリの肌はまるで雪のような白さだ。


久しぶりのルリ。ちょっと痩せた・・・・・・?薬の副作用なのか、前よりも髪も少なくなっている。


そう感じながらルリの傍まで行く。


「ルリ、久しぶり」


ルリを驚かせ無いように、声をかけて、傍にあった椅子に腰掛ける。


ルリは窓に向けていた目を私に向けた。


「サヤ!本当に久しぶりね!」


ルリの笑顔は変わって無かった。凄く凄く綺麗な笑みだった。
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