にじいろ奇跡
「お、いたいた」


屋上で寝ていたら、人の声がした。誰かなんて愚問だ。


だって私の想い人の声だ。間違える筈が無い。瞑っていた片目だけを開けるという、器用な事をする。


思った通り、郁人が太陽と重なるように、郁人が私の目の前に立っていた。


「此処に居ると思ったよ。沙夜は何かあると此処に居るよな」


上半身を起き上げている私に、郁人はおそらく爽やかな笑顔を向けて話しかけているのだろう。


「・・・眩しくて見えない」

「お、悪かったな」


顔をしかめながら、文句を言うと郁人は察してくれて、隣に並ぶ。


「・・・今何時?」

「8時45分。後5分で1限目だぞ?サボる気か?」

「行くよ」


8時45分・・・か。いつの間に時間はこんなに過ぎたのだろう・・・。


SHRをサボってしまった・・・。時間は思ったより早く進んでいたらしい。


1限目は数学か・・・。あの先生口喧しいから、遅れないように行こう。


「郁人、行こう」

「おう・・・」

「それから・・・ありがとう」


私を探してくれるのは、最近はいつも貴方だ。


迎えに来てくれて、ありがとう。






本当は駄目なのに・・・郁人は私のものでは無く、ルリのものだから・・・。





私の恋心はますます募っていく。
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