にじいろ奇跡
「そう・・・だね」


本当に早く来れると良いのに・・・。


郁人は上の空で空席を見つめていた。今なら話せるかな…。


「優・・・」

「ん?」

「放課後、残ってくれる?話がしたいんだけど・・・」

「――――・・・あぁ。」


長い沈黙の後、優は頷いて珈琲を飲み干していた。


「郁人!!飯の時間無くなるぞ?」

「うぉ!?ヤベェ!!」


黄昏ていた郁人はご飯の事を聞くと、お弁当を開けてご飯を掻き込むように残さず食べた。


「何時見ても、郁人のお弁当美味しそうだよね」

「そりゃお袋の手作りだからな」


郁人のお弁当は、何時も私のより大きくて綺麗に飾り付けられていて、しかも味も美味しい。


ルリのお弁当もそういえば見事な物だった筈だ。


私は両親も生まれた時から居ないから、お弁当を作って貰うという事は無いから羨ましい。


「なんならお袋に言おうか?沙夜の分もって」


私の生い立ちを知る、郁人の優しさ。


「いやいや、そんな迷惑かけられないし」

「そういうが、沙夜の弁当もなかなかだよな。1人で頑張ってたんだろ。凄いじゃねぇか」


優がそう言って、私の頭を撫でてくれた。そう言ってくれると、私も凄く嬉しい。


「まぁね。大変だったけれど、好きだし。大変な時はルリのママさんがお弁当作ってくれた事もあったかな」
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