にじいろ奇跡
「体調はどう?」


ルリの体調を聞く。これはいつものとこ。


「ここ最近、あまり良いとは言えなかったんだけどね。今日は調子が良いの」


柔らかな笑みは、苦笑いに変わった。


前よりあまり変わって無かったから良かった・・・。まずはひと安心。


ルリは迷惑をかけまいと、悩んでいる事も全部隠そうとするから


なかなか安心出来ないのだ。何時も辛いことは本当に苦しい笑みで躱してしまう。


「サヤ、手にしている箱は、ケーキ?」


やはり、ケーキ好きのルリは私の手元にあるケーキの箱を見つめていた。


ルリの瞳が輝いている。


「うん。ルリはケーキ好きだもんね。買ってきたんだ。食べる?」


ルリにそう言いながらも、私は既に食器類が入っている戸棚を開けていた。


「もちろん」


ケーキだとはしゃぐルリに、思わず吹き出した。


ルリは私の予想を裏切る事無く嬉しいそうに、笑っていた。はしゃぐルリを横目に


私はお皿とフォークを取り出して、先程買ったケーキをお皿に移す。


ルリの好きなイチゴが乗ったショートケーキ。


「イチゴちゃんだぁ!サヤ、食べないの?」


何も用意していない私を見て、ルリが不思議そうに見る。


「あー・・・うん。私はいいよ。ルリが喜んでくれたら、それだけで嬉しいし」

「でも・・・」

「良いから、良いから!」


ケーキは一つしか、買えなかった。だからルリだけの分を買って来た。


頭の良いルリはそれを察したのだろう。ルリの顔が曇った。


私の喜びはケーキよりも、ルリの可愛らしい笑みだ。だからたかがケーキ。ルリの笑みが見れるなら構わない。


「じゃぁ半分こしようよ!私一人で食べるのも、申し訳ないしね。」

「はっ!?」


私にとって、これは予想外の事だった・・・。
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