にじいろ奇跡
放課後。私は優と屋上に居る。少しだけ風が強いけど、肌寒いわけでもなく寧ろ心地良い位だ。


私はフェンスを掴み運動場を見つめる優の後ろ姿をじっと見つめた。


運動場からは野球部やサッカー部の掛け声が聞こえる。郁人もこの中に紛れて居るだろうか・・・。


「沙夜、話って?」


自分の考えに没頭していたら、優が痺れを切らしたように言う。


先程の格好とは違い、フェンスに体を預けて腕を組んで私を見つめる優。太陽のおかげで眩しくて私は目を細めて優を見つめた。


(言わなくちゃ・・・優に。ちゃんと伝えなきゃ)

「あの、ね。今朝の話だけど・・・。私優の事は好きだよ。・・・とも、だちとして。優を恋愛感情でなんて、やっぱり見れないから」

「沙夜・・・知ってたよ。俺を恋愛感情で見れないってこと。郁人が好きなんだろ」

「何・・・で!?」

「ずっと沙夜が好きだった。だから沙夜が好きなのは郁人だって知ってたよ」


私は喋る事が出来ず、黙って頷いた。


「・・・でも、ルリのものだから・・・・・・。私は見守れるだけで幸せだから・・・。優の気持ちも凄く嬉しい。だから・・・気持ちだけ貰っておくね」


精一杯の笑みを優に送る。私にはそれ位しか出来なかった。


「ありがとう。だけど沙夜。お前分かってるか?辛くないか?」

「辛いけれども、私ルリも郁人も幸せになって欲しいから。ルリが幸せなら郁人が幸せなら、私も嬉しいし」

「そうか・・・。無理はするなよ」


優の優しさが見にしみる。


「優って・・・名前の通り優しいね。ありがとう」

「別に。お前だけだから」


優は優しい目をして私に近づくと、軽く頭を2、3回叩いてきた。そのまま出入口の元に歩いていく。


「これからも!!!!」


私は精一杯の大声を出して優の歩みを止めた。


「これからも、よろしくね」

「あぁ・・・」


優はそう言うと後ろを振り返らずに屋上を出た。




大丈夫。





言葉にしなくても優には伝わった。





“友達としてよろしくね。”は。
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