にじいろ奇跡
郁人がそう言ってくれた。私は郁人に頷く暇も無い。郁人も察してくれたのか、何も言わない。


郁人が先に車に乗り込んだ。私も郁人の隣に乗り込むと同時にドアを閉める。


既にエンジンが入っていた車はドアが閉まる音と同時に発車した。


「ッハァハァ・・・ハァハァ・・・」

「ハァハァ・・・ハァ・・・大丈夫か?」


頷く私。まだ喋る気力は無いが、走ったお陰でボサボサになった髪と制服を整える。


郁人も少し制服が乱れたのか整えていた。


「2人ともシートベルトしろよ。そら。お茶も買ってきた」


車内はクーラーが効いていて、火照った身体を冷やしてくれた。


郁人が先生から2つのお茶を受け取り、1つを私に渡してくれた。


「ありがとうございます」


水分補給。疲れた体は大分楽になった。


「郁人もありがとう」

「いや。気にすんな」


頭を撫でてくれる。


「私・・・昨日お見舞いに行ったのに・・・ルリの体調悪いのに気付かなかった・・・点滴増えてたのに、私・・・ッ!!」

「沙夜、自分を責めるなよ。瑠璃はお前に気付かれて欲しく無かったんだよ。きっと。だから自分を責めるなよ」


私の肩を抱いて郁人がそう言う。私の今までの不安はこの事を指していたのか。


気付けなかったことに自分に腹が立つ。唇をギュッと噛んだ。


(私が行くまで無事で居てね・・・。ルリ!!)


心の中で何度もそう願う。


「ルリ・・・」
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