にじいろ奇跡
おじさんとおばさんが涙する。


「野沢、お疲れさん。俺は正直最初、体の弱い野沢の担任になる事に抵抗が有りました。体が弱いというハンデを背負う生徒と、どう付き合えば良いか不安だったよ。」
浜田先生が一息吐いて、ルリを撫でる。


「だけど、野沢に会った時は酷く驚いた。体が弱いだなんて微塵も感じさせない、ハンデが無いような野沢に、俺は沢山救われたよ」


浜田先生が泣いている。


初めて知った浜田先生の気持ち。


ルリは凄い。浜田先生の気持ちまで変えてしまった。


ルリの手を握る力を強くした。ルリから反応は無い。だけど・・・


「ルリが・・・泣いてる」


そう、閉じられた目からは涙が流れている。


「奇跡だ!!もう聴力も殆ど無いのに、聞こえていたのか!?」


先生まで驚かしてルリは最後に奇跡を起こした。小さな小さな奇跡を。


「あ・り・が・と・う」


そう言って笑った。目を開いて笑った。


皆が息を飲む。


ルリは本日一番の笑みを浮かべて、永い永い永遠の眠りに付いた。


ルリの手がどんどん冷たくなっていく。


「ッルリ!!・・・ッ嫌ぁぁぁ!!」

「沙夜、落ち着け!!」

「ッ!・・・ルリぃ!」


私は思わず叫んだ。ルリがいなくなってしまうなんて、考えたくない。


郁人が私を後ろから抱き締めて抱き締めてくれる。涙は止まらないけれど、何とか落ち着いてきた。


(悲しいケドでも・・・)

「ルリ・・・ありがとう」


また私の目から溢れる涙は、もう悲しい涙では無い。感謝の涙だ。


生まれて来てくれて、ありがとう。


ルリと出会う事が出来て、本当に良かったです。


私は沢山の人に支えられています。


ルリだけでは無かったよ。


私は幸せ者です。


ありがとう ありがとう


皆に感謝の気持ちでいっぱいです。


本当にありがとう。
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