にじいろ奇跡
ルリの部屋は、まだ片付けて居ないようだった。ルリの匂いがまだ残っている。


その中には私とお揃いで買ったものもある。


「この部屋は、このままにしておくつもりよ」


おばさんは静かにそう言った。


「・・・そうですよ。だって此処にルリがいたって証拠ですもん」


片付けが出来ないのだろう。ルリの死はあまりにも早すぎた。これからだという時だったのに・・・。


「沙夜ちゃん有り難う」


おばさんは穏やかな顔でそう言った。


「・・・はい」


私はルリが最も気に入っていた、クマのぬいぐるみを貰った。


本当はもっと貰いたかったのだけど、生憎私のマンションは狭い。これにした。


「ご馳走様でした。今日は有り難うございます」


夕食まで頂き、私は家へと帰ることにした。


「また来てね。今度・・・おじさんが居るときに大事なお話をしましょう」


おばさんは玄関まで見送りに来てくれた。私の手を握り微笑する。


「分かりました。行きますね!」


おばさんの手を握り返して、夕暮れの道を家まで歩く。貰ったぬいぐるみを抱き締めて。


心は軽かった。でもルリが居ないあの家は凄く寂しいものだった。


何時か違和感など無くなってしまうのだろう。でもルリの事は、絶対に忘れない。


どんなに時間が流れて過去の話になったとしても、当事者の辛さは解決されないのだから。
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