にじいろ奇跡
「さて・・・と、じゃぁまず施設に行かないとな」


お父さんは、私に道案内を頼んで車を走らせた。


施設の場所は町外れの山奥にある。生活には凄く不便な所だったけれど、空気が美味しくて快適な場所だ。


車を2時間位走らせてようやく施設に着いた。


「随分と山奥なのね」

「生活には不便だったけれど、先生方も凄く優しくて空気が良い所なの」


ガタガタ揺れる整備されていない道が珍しい。舌を噛まないように気を付けながら話す。


「あの建物かな?」


白い壁に蔓草がくっついている、施設の壁は相変わらずだった。


「そうです」

「此処からは歩こうか」


そういうお父さんに同意して私達は車から降りて歩く。外で遊んでいた子ども達が私達に気付いて、物珍しそうに見ていた。


此処には里子を探す、里親位しか来ないから来客者は珍しいのだ。


「知恵子先生は居るかな?」


私は一人の女の子に聞くと、女の子は頷いて建物の中に入って行った。


暫くすると女の子が女の人を連れてやって来た。知恵子先生だ。


「知恵子先生!!」

「!?沙夜ちゃん!?久しぶり!!2年位かしら?あまり変わって無いわね。そちらの方は?」


私は知恵子先生に簡単にお父さんとお母さんの話をすると、知恵子先生は中へと案内してくれた。


「此処は変わらないですね」

「そうかしら?沙夜ちゃんが出ていってから本当に寂しくなったわ」


案内された場所は応接室だった。


「どうぞこちらに。少々お待ちください。今責任者をお呼びしますから」


知恵子先生はそう言って部屋を出た。


「此処が沙夜ちゃんが育った施設ね・・・」

「うん。知恵子先生は私が出ていくまで、ずっと面倒を見てくれた先生なんだ」
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